ロンドンで別格の伝統と格式を誇る名門ホテルがリッツロンドン「The Ritz London」である。ホテル側面の外壁に1枚の歴史的プレートが掲げられている。“This hotel, inspired by Cesar Ritz, designed by Charles Mewes & Arthur Davis opened on 25th May 1906”。“ホテル王”と呼ばれたセザールリッツの指揮の下、8年前にリッツによって建てられた「Ritz Paris」と同じく、シャルル・ミューズとアーサー・デイヴィスの建築により、ロンドン市内中心部、ピカデリー通り沿いのグリーンパーク脇に建てられ、1906年5月25日に開業した。2002年11月、チャールズ皇太子の誕生パーティーがホテル内で開催され、エリザベス2世女王とエディンバラ公が臨席した。同年にはチャールズ皇太子よりロイヤル・ワラント(御用達指名)を受けている。
リッツロンドンは英国王室との関わりが密であるがゆえに、スタッフの多くは燕尾服でゲストに応対している。この様な制服に対する気遣いは他のホテルではあまり見かけない。また、ホテル内のアンビアンスを保つため、ロンドン市内のホテルでは唯一ドレスコードがある。この規則は近年、厳格には守られてはいないが、レストランには午前11時以降、すなわち朝食時以外にはジャケットの着用が求められている。
リッツロンドンはスイートを含む全136室を擁し、外観は中世のネオクラシック様式であり、内装は所々に金箔があしらわれたルイ16世調のインテリアデザインを持つ。今回は「Deluxe Suite」を紹介したい。リノベーションが済んだばかりで、グリーンパークに面した気品あふれるスイートだ。メインダイニング「The Ritz Restaurant」は、開業当時は伝説のエスコフィエが指揮を執っていたレストランで、2017ミシュラン英国版で念願の1ツ星を獲得した。人気のラウンジ「The Palm Court」はアフタヌーンティーの予約客でいつも賑わっている。館内には多くのボールルームを用意し、「The Queen Elizabeth Room」や「The William Kent Room」など息を呑む贅沢な雰囲気だ。その他、スパ・ビューティー施設「The Ritz Salon」やトレーニングジムなど充実している。
メインダイニング「The Ritz Restaurant」は華麗な、且つ広大な空間を有しているが、各テーブルの間隔が狭く、やや違和感を覚える。驚いた事は、朝食に“将軍家御用最上御濃茶”「初音」の抹茶サービスが有る事だ。もちろん、本式の作法を求めるのは無理があるが、茶室で使う正式の茶筌を用意し、ゲストの前で見事な点茶を披露している。