アマンサマーパレス北京「Aman Summer Palace, Beijing」はその名の通り、隣接する清朝皇帝の夏の離宮「頤和園」に由来し、2008年、アマンリゾートが最初となる都市型リゾートホテルを中国・北京に誕生させたものだ。アマンサマーパレス北京「北京頤和安縵酒店」の見所は、頤和園の西太后への接見を待つ要人の控えの間として実際に使用されていた居間・建物などを、アマンリゾートが中国伝統様式にって大規模改修や増築を施し、ラグジュアリーホテルとして見事に蘇らせている点にある。
「頤和園」とは西太后が贅を尽くした紫禁城の夏の離宮であり、元々は清の6代皇帝乾隆帝が母の還暦を祝って造営した「清流園」という名の庭園であった。第2次アヘン戦争で破壊され、1886年にこれを頤和園として修復したのが西太后である。その際、西太后は創建時の乾隆帝の母思いの故事にならい、皇帝の光緒帝の名のもとに西太后の隠居所として建築させたものであった。また、その莫大な修復費に北洋艦隊の経費を流用したため、日清戦争敗北の一つとされ、急速な清朝の滅亡に繋がって行くこととなる。
左右に巨大な獅子像を配置した大門をくぐると、ホテル本館となる清朝伝統様式の建物が見えて来る。エントランスホールは黒檀などダーク調のウッドを多用した重厚な雰囲気で、緻密な彫りを施した豪壮な伝統の建具などに圧倒される。今回は戸建てパヴィリオンのスイート「Deluxe Suite」をご紹介したい。全体で51ある客室のうち、専用の中庭に面した伝統的な四合院造りの建物だ。室内は応接室、居間、寝室、バスルームから成り、どれも清王朝の古典的しつらえと現代のモダンなデザインを調和させている。レストランは充実しており、「御膳」の文字が掲げられた建物の中に日本料理「Nama」、西洋料理「The Grill」が水面のコートヤードを挟んで並んでいる。中国料理「Chinese Restaurant」は別棟にあり、中国琴の生演奏が楽しめる。圧巻なのは本館地下1階・2階に5000㎡の広大な面積を誇るSPA施設だ。25mのスイミングプールやトレーニングジムも付帯し、更に専用のシアタールームも用意するなど、巨大な地下施設は近未来的な空間となっている。
アマンのゲストにとって嬉しいことは、塀で隔てられた頤和園にアマン側にある特別の通用門からフリーパスで、好きな時間に入園ができることであろう。しかも、園内地図やペットボトルを渡され、帰りには手拭きタオルを用意して迎えてもらえる。また夏ならば、一般客が入園する前に頤和園でのご来光を拝むことも可能である。ここは北京中心部から30分程で行ける隠れ家的なアマンと言える。
ゴールドの「AMAN」プレートが輝くライトアップされたアマン正門
いかにも中国といった雰囲気のレセプションデスク