国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Wheatleigh
 
ウィートレイは、まるでお伽話のような風景に美しく溶け込み、
すべてを知り尽くした大人のための珠玉の隠れ家ホテルと言える。

 

 
マサチューセッツ州バークシャー地方、ここはアメリカの富裕層がこぞって別荘を構える全米屈指の“あこがれの地”である。このエリアの中心地レノックス郊外の森に優雅に佇む「Wheatleigh」は、1893年にトーマス・クックの子孫である資産家ヘンリー・H・クックがスペイン伯爵家に嫁いだ愛娘への結婚祝いとして贈った建物だ。16世紀のフィレンツェ・パラッツォ様式を模した麗しき館は、後年になってホテルとしての改装が行なわれた。その広大な敷地には芝生が広がり、バークシャーの美しい山並みと湖を一望することができる。この庭園は、NYのセントラルパークを設計した著名な造園家フレデリック・ロウ・オルムステッドがデザインしたもので、周囲は幻想的な雰囲気が漂う。
 

 
レノックス「Lenox」はボストンから車で2時間の距離にあり、日本で言えば“軽井沢”をよりハイソサエティーにした感の街である。ボストン交響楽団の夏の避暑地として知られ、小澤征爾を記念した音楽堂「Seiji Ozawa Hall」も建っている。1936 年にボストン交響楽団 がここで最初のコンサートを開いたことに由来し、年に一度開催されるタングルウッド・ミュージックフェステイバル「Tanglewood Music Festival」の間、閑静な街は多くの人でにぎわいを見せる。ウィートレイも近隣各州から集まった音楽愛好家のセレブリティ—たちで華やかな季節を迎える。
 


 
ウィートレイはわずか19の客室とスイートルームで構成され、アンティーク家具、建築家がデザインしたオリジナルの調度品、そして美術館に所蔵されるレベルのモダンアートなどが並ぶ贅沢な造りである。筆者にアサインされた部屋は2階正面サイドの「Junior Suite」で、約50㎡の広さを持ちバスルーム前に小さなテラスが付く。この部屋から見る壮大な景観はまるで一幅の名画のようだ。シェフJeffrey Thompson率いるダイニング「The Dining Room」は驚きと感動を与えてくれる。AAAファイブ・ダイヤモンド、フォーブス・ファイブスターを保持し、マンハッタンのミシュラン・シェフたちは異論を唱えるかも知れないが、NYを含めてアメリカ東部地域で絶大の評価を得ている。
 


 
レナード・バーンスタインをはじめ、著名な音楽家に愛されたウィートレイは、アメリカ上流社会の夏の社交場とも言われる。おそらく、LHW加盟のホテルとしては最小規模であろうが、そのクオリティーは最高ランクにあると言って良いだろう。ウィートレイは、まるでお伽噺のような風景に美しく溶け込み、すべてを知り尽くした大人のための珠玉の隠れ家ホテルと言える。
 


樹林帯のエントランスアプローチを抜けると「Wheatleigh」の麗しき正面玄関が見えてくる

クラシカルなファイアープレイスがある気品あるロビーラウンジ

飾り棚に収まる絵皿が美しいカジュアルダイニング「Library」

2階回廊より俯瞰するエントランスフロア

「The Dining Room」のもう一つの部屋はファイアープレイスのある落ち着いた雰囲気だ

「The Dining Room」は敷地の芝生ガーデンに突き出した位置にある

目の覚める美しさのダイニング「The Dining Room」。全米自動車協会AAAのファイブダイヤモンド認定のレストランで、
エグゼクティブシェフのJeffrey Thompsonは驚きと感動を与えてくれる

深い森の中に用意された優雅なスイミングプール

広大な芝生ガーデンの巨木の影から16世紀のフィレンツェ・パラッツォ様式を模した館を望む

 

樹林帯のエントランスアプローチを抜けると「Wheatleigh」の麗しき正面玄関が見えてくる