国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

 Hôtel de Paris Monte-Carlo

 

荘厳ともいえるグランドロビーに一歩踏み入れると太陽王ルイ14世の騎馬像にゲストは迎えられる。

 
 モナコのホテル・レストラン、もしくは観光産業を語る際に必ず言及されるのは、モンテカルロSBMグループの存在だ。“ソシエテ・デ・バン・ド・メ ール”「La Societe des Bains de Mer」という名のモナコ公国を主要株主とする半官半民の企業で、3000人の従業員を擁するモナコ最大の観光産業グループである。SBMは5つのカジノ、オテル・ド・パリやエルミタージュなどを含む4つのホテル、ミシュラン3ツ星からカジュアルスタイルを含めて33のレストラン、ヨーロッパ随一の規模と質を誇るスパなどを傘下に所有し、まさに国家挙げての巨大グループだ。


 
2011年7月3日にアルベール2世大公が盛大な結婚式を挙げて脚光を浴びたモナコは、正式にはモナコ公国という名称で域内は6つの区域に分かれている。そのうちの1つがカジノのある中心部に位置するモンテカルロ(カジノ・リゾート地区)だ。 SNCF(フランス国鉄)の駅名もモナコ‐モンテカルロ駅となっている。1861年シャルル3世の治世下、モナコ公国の主権が回復するとすぐにグラン・カジノを63年に開業させ、翌64年にオテル・ド・パリ、68年にはカフェ・ド・パリがオープンして、遂にカジノ広場の“夢のトライアングル”が完成する。ちなみに現在のグラン・カジノはパリのオペラ・ガルニエを建築したシャルル・ガルニエによって78年に建て替えられたものである。


 SBMグループの旗艦、オテル・ド・パリはモンテカルロの象徴として歴史を刻んで来たパラスホテルである。著名なデザイナーのフランソワ・ブランの創作により、ベルエポック様式の絢爛たる装飾美を誇示し、シャルル3世の夢を実現して1864年に開業した。荘厳ともいえるグランドロビーに一歩踏み入れると太陽王ルイ14世の騎馬像にゲストは迎えられる。騎馬像の右手にはアラン・デュカス監修の3ツ星レストラン「Le Louis XV」が悠然と店を構える。ロビーを進むと左手にコンシェルジ ュデスクがあり、その奥にマホガニーと鏡で囲まれた優雅な空間があり、レセプションデスクが2台用意されている。なお、グランドロビーは7月の世紀の婚礼を前に、巨匠ピエール・イヴ・ロションのデザインにより改装された。


 


 
 ホテルは83のスイートを含む全182室のゲストルームを有し、「Le Louis XV」を始め5つのレストラン・バー、アルベール2世大公が結婚披露宴を催したことでも知られる華麗なボールルームの「Salle Empire」などを擁している。特筆すべきはヨーロ ッパ随一の規模を誇る“レ・テルム・マラン”「Le Thermes Marins de Monte-Carlo」であろう。 6600㎡に及ぶ巨大な4層のコンプレックスで、あらゆるヘルスケア、トリートメント、スイミングプール、フィットネスなどの総合施設である。また、隣接するエルミタージュとは姉妹ホテルの関係で、レ・テルム・マランを共同で使用してそれぞれ地下道で連絡している。


モナコを代表するグラン・カジノ、「Le Casino de Monte-Carlo」

コンシェルジュの奥にあるマホガニーと鏡で囲まれた優雅な空間のレセプションデスク。ゆったりとした雰囲気でゲストを迎える

ホテルを代表する壮麗なボール・ル ーム「Salle Empire」。エルミタージュの「Salle Belle Epoque」と対比されるサロンだ

地中海料理のレストラン「Cote Jardin」。サマーシーズンには地中海の見えるテラス席が人気だ

新館部分最上階にあるレストラン「Le Grill」。驚くことにサマーシーズンには天井がフルオープンになる

広いテラスが付属する客室「Exclusive Sea View Room」。この部屋は約50㎡の広さを誇り、テラスから望む美しいコートダジュールの景色が自慢だ

さほど広くはないが、ロイヤルブルーのカーペットに優美なコンソールと絵画が映えるエレベーターホール

白亜の大理石が美しいバスルーム。黒のくっきりとした床の紋様とゴ ールド縁のミラ ーが趣味の良いアクセントになっている