国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Hôtel Métropole Monte-Carlo

 

「モナコの宝石箱」と称されるメトロポールは、
モナコという一流ブランドの響きにも似たイメージと共に、深い憧憬の念を抱かれ続けるであろう。

 
 “A modern hotel with a wonderful pedigree”「由緒ある系統を誇るモダンなホテル」とホテルの歴史に掲げ、世界中のセレブリティ—から絶大な評価と人気を誇るモナコを代表するホテルだ。1886年に「Monte-Carlo Company Ltd」がローマ法王レオ13世の所有していた土地にホテルを建設したことに始まる。その後の変遷を経て、2004年に全面的なリニューアルを果たし、最新設備を誇る現代的なラグジュアリーホテルとして生まれ変わった。世界的なインテリアデザイナーであるジャック・ガルシア氏が内装を担当し、モダンでありながらこれまでの歴史と格式を尊重したデザインに統一された。伝統的な優美さに現代的テイストが見事に調和した美しいホテルとして世界中の顧客に愛されている。


 
 クラシカルで重厚感溢れるロビーの奥に、ミシュラン2ツ星レストラン「Joel Robuchon Monte-Carlo」が店を構える。現シェフのクリストフ・キューザック氏が生み出すのは、“ロブション”流の革新的フランス料理と、モナコという土地の恵みを加えた地中海料理の融合である。ひときわ目を引くのはオープンキッチンに面したカウンター席だ。日本でもお馴染みの「L'ATELIER de Joel Robuchon」の手法が、この重厚な雰囲気の店内にも使われている。メトロポールが誇るもう一つの“ロブション”が日本料理の「Yoshi」である。「Yoshi」はこれまで二度、グルメ界に大きな話題を提供している。最初は2008年の開業時、あのロブションが和食レストランをプロデュースしたとして、世界のグルメたちの話題をさらった。二度目は、その1年半後にミシュラン1ツ星を獲得してしまったことであろう。シェフの山崎健央氏は長年ロブションの下でフレンチのキャリアを積み、後に懐石料理の道に転じその卓越した腕前で、連日地元のセレブたちの舌を唸らせている。



 メトロポールは全141のゲストルームを有し、そのうち約半分の64室がスイートという贅沢な客室構成である。エントランスを抜けると絢爛かつ重厚なロビーに圧倒される。ジャック・ガルシアが特に強いこだわりを注いだロビーは、一種独特のけだるい甘美な空気が漂う空間だ。地元セレブのマダムたちもこの稀に見るエレガントな空間をよく理解して、連日アフタヌーンティーで賑わっている。また、モナコ随一と言われ評価の高いスパ「Metropole ESPA」は、ホテル本館から独立したエリアにあり、ちょうど日本料理「Yoshi」の店と車寄せアプローチを挟んで双方のエントランスが向き合っている。


 


 
SBM傘下のオテル・ド・パリやエルミタージュが、ともするとアメリカなどの海外からの観光客やカジノ絡みの顧客層が多いのに対し、メトロポールは地元モナコのハイソサエティーを主な顧客層としている。したがってよりきめ細やかなホスピタリティーが要求され、例えばルームサービスで用意される料理もロブションのプロデュースという。まさに「モナコの宝石箱」と称されるメトロポールは、モナコという一流ブランドの響きにも似たイメージと共に、深い憧憬の念を抱かれ続けるであろう。


端正な美しさの車寄せアプローチから望む「Hotel Metropole Monte-Carlo」

ミシュラン1ツ星を獲得した日本料理店「Yoshi」

各界の著名人のレリーフが飾られているレセプション前のラウンジ

レストラン「Joel Robuchon Monte-Carlo」前にあるバーコーナー

「Deluxe One Bed Suite」のリビングルーム。トップフロアにある約60㎡の広さを持つコーナースイートだ

リビングから見たベッドルーム

窓を開けて、テラスからは紺碧の地中海が見渡せる

部屋の真下に広がる屋外スイミングプール

ゴージャスなバスルーム