国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

The Peninsula Bangkok

 

オリエンタルホテルの喧噪を避けるセレブたちのリピーターが多く訪れ、
ペニンシュラのアンビアンスを支えている。

 
 バンコクの中心部を滔々と流れる大河が母なるチャオプラヤ川だ。ペニンシュラがその対岸にホテル建設を発表した時、メディアの一部は疑問を呈したが、多くはその英断に賞賛の声を上げた。対岸トンブリ地区の将来に大きな可能性を感じ取った訳だ。当時、開発の遅れた川向うに高級ホテルを開業すると言う発想は皆無に等しかった。なぜなら、80年代後半までバンコクには対岸に渡る橋は数本しか無く、交通インフラはまだ開発途上の時代であった。

 
 ペニンシュラ バンコクは37階建ての高層建築で、W字型にデザインされた端正な姿が印象的だ。1998年の開業後は期待通り、ヒルトン、マリオット、アナンタラなど有力ホテルがこの対岸地域に次々と進出を果たした。また、超高層の高級レジデンスも多数建設され、開業当時の立ち遅れた面影はまったく無い。現在は上記ホテルの渡し船も加わって、各ホテルが意匠を凝らした船に自前のロゴマークとホテル旗を掲げ、チャオプラヤ川対岸と連絡している。


 
 ペニンシュラ バンコクはスイートを含む全370室のゲストルームを持つ。筆者にアサインされた部屋は上層階に位置する「Grand Deluxe Suite」で、74㎡の広さを持つ。眼下にチャオプラヤ川を見下ろし、バンコク市内を一望する贅沢な雰囲気だ。メインエントランスから館内に入ると気品あるラウンジ「The Lobby」がゲストを出迎える。左手奥に進むとレセプションデスクがペニンシュラ流の目立たぬ場所に置かれている。反対に右手階段を下がると船着き場に向かう回廊となり、途中にお洒落な「Peninsula Boutique」がある。チャオプラヤ河畔にはテラスレストラン「River Café and Terrace」と「The River Bar」があり、背後には芝生の庭園が広がりスイミングプールへと続く。その庭園を借景として1階にバンコク屈指の広東料理「Mei Jiang湄江」が店を構える。プール入口にはアユタヤ古式建築のタイ料理店「Thiptara」があり、細長いプール奥には「The Peninsula Spa by ESPA」のコロニアル風建物が目に付く。館内のトリートメントルームに向かう“光の回廊”はエキゾチックな高揚感を演出している。


 
 川向うの立地というリスクを背負った門出であったが、オリエンタルホテルの喧噪を避けるセレブたちのリピーターが多く訪れ、ペニンシュラのアンビアンスを支えている。また、バンコクの交通渋滞に対処してホテル屋上のヘリポートを活用し、専用ヘリコプターでの空港送迎に力を注ぐ。他方、バンコク名物のトゥクトゥクのペニンシュラ仕様を導入し、小回りの利くサービスも展開している。


お馴染みの獅子像が置かれた、ザ・ペニンシュラバンコクの
正面エントランス

チャオプラヤ川に向かって広がるスイミングプール

「The Peninsula Spa by ESPA」内のエキゾチックな“光の回廊”

チャオプラヤ川に面したテラスレストラン「River Café and Terrace」

テラス背後には芝生の庭園。1階には「Mei Jiang湄江」が入り、2階はラウンジ「The Lobby」

レストラン「River Café and Terrace」の朝食ビュッフェ風景

バンコク屈指の広東料理の名店
「Mei Jiang湄江」のレセプション

落ち着いた雰囲気の独立したベッドルーム

余裕の広さを確保したバスルーム