国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Belmond Grand Hotel Europe

ホテルヨーロッパは長い歴史と格式を兼ね備え、
古都サンクトペテルブルクのランドマークホテルとして君臨している。

 
 ロシア、サンクトペテルブルクの随一の目抜き通り、ネフスキー大通りに威風堂々として立つ建物がある。それがロシアを代表するホテル「Belmond Grand Hotel Europe」である。かつてニコライ1世の時代に、建築家カルロ・ロッシにより三つの邸宅をまとめて荘厳な外観に造り変えられた。その後、1875年にホテルとして開業。実に創業140年の歴史を持つロシア屈指の名門ホテルである。1991年まで、ホテル・エウロペイスカヤ「Hotel Evropeiskaya」の名称で知られていたが、現在はベルモンドグループの旗艦ホテルの一つとして高い評価を得ている。


 
 館内はアールヌーボーの優美な内装で統一され、大理石や金がふんだんに使われたな調度品は見応えがある。ホテルヨーロッパは19世紀の欧州で最も大きなグランドホテルの一つであり、ツルゲーネフ、チャイコフスキー、ストラヴィンスキーなどロシアの芸術家をはじめ、ヨーロッパ社交界の数多くの名士が集い宿泊した。ユニークなのは、2階に設けたヒストリック・フロアで、一室一室を異なる名称とテーマでしつらえたスイートルーム群だ。世紀末前後のロシア帝政時代の気品を漂わせ、全室に高い天井と修復されたアンティーク家具、豪華なバスルームなど格調高く、専属バトラーも待機している特別フロアである。


  
 ホテルヨーロッパはスイートを含め全265室を擁し、ネオ・バロックの華麗なファサードを際立たせている。筆者にアサインされた部屋はヒストリック・フロアにあるドストエフスキー・スイート「Dostoevsky Suite - Historic One Bedroom Suite」で、緑豊かな「芸術広場」に面したコーナースイートだ。ドストエフスキーの似顔絵や多くの小説作品などが飾られ、印象深い室内デザインレイアウトである。レストランは充実しており、メインダイニングの「L’Europe」はロシアで最も古くからオープンしているレストランで、「Caviar Bar & Restaurant」はロシア屈指のウォッカとキャビアをそろえたレストランだ。また、日本とアジアン料理を意識した「AZIA」、ヨーロッパの街並みを再現した「Mezzanine Café」なども気軽に楽しめる。


 
ホテルヨーロッパは長い歴史と格式を兼ね備え、古都サンクトペテルブルクのランドマークホテルとして君臨している。海外からの賓客も多く、近年ではクリントン元米国大統領や日本の小泉元首相なども宿泊している。白夜の季節に浮かび上がる壮麗なホテル正面ファサードは幻想的で、伝統のロシアンホスピタリティーと現代とが見事に調和した居心地の良いホテルと言えよう。


ホテルヨーロッパは長い歴史と格式を兼ね備えた、古都サンクトペテルブルクのランドマークホテルである

ベルモンドの銘板を掲げた、いかにもロシアらしい雰囲気のホテル正面玄関

ホテル館内中央に位置する華麗なステアケース

レセプションデスクでにこやかに応対する女性スタッフ

「Caviar Bar & Restaurant」は、ロシア屈指のウォッカとキャビアの名品をそろえている

日本とアジアン料理を意識したオープンキッチンの「AZIA」

エレガントな雰囲気が漂う「Lobby Bar」

コーナースイートの重厚感あふれるベッドルーム

ドストエフスキーの似顔絵が飾られたライティングデスク