国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Waldorf Astoria Shanghai on the Bund

 

ウォルドルフ アストリア上海は上海クラブの名の通りな館といった風情が印象的だ。
当時の華やかなサロンの系譜を持つ「Salon de Ville」、上海総会のクラブメンバーたちが
雑談に花を咲かせたクラシカルなバー「Long Bar」など、上海租界が遺した歴史の残照が心に沁みる。

 
 ウォルドルフ アストリア上海「Waldorf Astoria Shanghai on the Bund」(以下、WA/上海)は ”WALDORF” ブランドとしてアジア初進出の場を中国・上海に選び、2010年に満を持してオープンした。上海の外灘バンド地区はペニンシュラ上海をはじめ、多くの海外ラグジュアリーホテルが進出を競う激戦区であるが、ウォルドルフがコロニアルスタイルの建物を改修して参入した。
1910年に建てられた歴史的な「上海総会」(上海クラブ)を手塩にかけて改装してヒストリカル棟「旧館Heritage Wing」とし、旧館のネオクラシックスタイルの建物に隣接してモダンなタワー棟「新館Tower Wing」を新設した。
 

 
 WA/上海は非常にユニークな構造を採用している。正面エントランス車寄せはタワー棟にあり、レセプションとコンシェルジュデスクもにある。ヒストリカル棟への連絡部分は巨大な地下空間を創造してホテルの中心部とし、半地下スタイルのオールデイダイニング「The Grand Brasserie」を設けている。ダイニングを見下ろすメザニンには回廊スタイルのラウンジ「Peacock Alley」を用意して、両ウィングの行き来を容易にしている。 


 
 WA/上海は1920年代の租界時代の建築物が残る外灘バンドの中心に、スイートを含め両ウィングを合わせた全260室を擁して建っている。今回は旧館Heritage Wingにあるトップスイート「Waldorf Deluxe River Suite」をご紹介したい。約95㎡の広さを持ち、浦東側の超高層ビル群を望み、租界時代のオールド上海の雰囲気を随所に残す貴重なスイートである。旧館の上海クラブ側にはメインダイニングの「Pelham's」、中国料理の「蔚景閣Wei Jing Ge」、当時極東一の長さを誇ったカウンターの「Long Bar」など、非常にクオリティーの高いレストランを提供している。特に「Pelham's」は上海クラブの創設者、Sir Warren Pelhamの名を冠して開業したレストランで、Plate Michelin を 2018/19に獲得している。スパ施設「Waldorf Astoria Spa」はアジア・パシフィックで最初に開設したスパで、VIPスイートを含め8室のトリートメントルームを備えている。
 


 
 「外灘」という名称は、“外国人の河岸”を意味し、この一帯は20世紀前半にかけての租界地区(上海租界)であり、当時建設された西洋式高層建築が多く建ち並んでいる。官庁と銀行の豪壮な建物が多いが、WA/上海は上海クラブの名の通りな館といった風情が印象的だ。当時の華やかなサロンの系譜を持つ「Salon de Ville」、上海総会のクラブメンバーたちが雑談に花を咲かせたクラシカルなバー「Long Bar」など、上海租界が遺した歴史の残照が心に沁みる。


1910年に建てられた歴史的な「上海総会」(上海クラブ)を手塩にかけてホテルに改装した

両ウィングの連絡部分は巨大な地下空間を創造して「The Grand Brasserie」を設けている

新館Tower Wingから見た旧館への連絡部分。

ダイニングを見下ろすメザニンにある回廊スタイルのラウンジ「Peacock Alley」

中国料理の「蔚景閣Wei Jing Ge」のレセプション。上海料理や広東料理をはじめ中国各地の本格料理が楽しめる

上海総会のクラブメンバーたちが雑談に花を咲かせたクラシカルなバー「Long Bar」。

階下にあるスパ施設「 Waldorf Astoria Spa」のゴージャスなエントランス。

当時の上流社会の雰囲気が感じられるゴージャスなスイミングプール

クラシカルな天蓋カーテンを施した「Waldorf Deluxe River Suite」のベッドルーム

シャンデリアが煌めくリビングからベッドルーム方向を望む

気品あるクラシカルなバスルーム

オールド上海の歴史を感じさせる旧館の館内廊下