国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Four Seasons Hotel Lion Palace St. Petersburg

フォーシーズンズホテル ライオンパレス サンクトペテルブルグに一歩踏み入れると、
1820年代帝政ロシアの華やかなりし宮殿の香りが飛び込んでくる。

 
 帝政ロシアの首都であったサンクトペテルブルクには伝統と格式を誇る、いわゆる老舗名門ホテルが数多く存在するが、2013年にある衝撃がホテル業界に走った。フォーシーズンズホテルがラグジュアリーの粋を集めた新たなプロパティーを最高の立地にオープンさせたためである。ホテルの名は「Four Seasons Hotel Lion Palace St. Petersburg」(以下、FS/LP)。ロシア初のフォーシーズンズホテルの誕生であった。実は、モスクワとサンクトペテルブルグで同時に建設を開始。モスクワの方がロシア初のフォーシーズンズを目指したが工事に遅れが出て、こちらがロシア初のフォーシーズンズとなった。ちなみに、モスクワは翌年2014年にオープンしている。


 
 ライオンパレスの名称は、正面エントランスに鎮座する大理石で造られた一対の獅子に由来する。旧海軍省の前面に位置し、“The House with Lions”として知られる壮麗な宮殿は、1817年の建設着工以来、旧ロシア帝国軍事省として使用され、戦後は政府の建築局など色鮮やかな歴史に彩られてきた。聖イサーク大聖堂の真横に建つこの歴史的建造物は、大聖堂と同じ著名なオーギュスト・モンフェランの設計により建設されている。


  
 FS/LPは26室のスイートと157室のゲストルームを擁し、2頭の獅子を従えた正面ファサードはまさに現代の宮殿といった趣である。筆者にアサインされた部屋は最上階に位置する「Four Seasons Terrace Room」で、張り出した専用テラスから聖イサーク大聖堂を真正面に望む人気の客室だ。レストランは、シンガポール、東京、香港の頭文字を取ったアジアンテイストの「Sintoho」があり、すしカウンターや鉄板焼きコーナーもある。“旅の道程”という意味のモダンイタリアン料理の「Percorso」は、4つのゴージャスな部屋に分かれている。また中心部に位置しトップライトから淡い陽光が入る「The Tea Lounge」で用意される朝食は楽しい。スパ施設「Luceo Spa」は伊フィレンツェの世界最古の薬局「Santa Maria Novella」のオイルを使用したアロマセラピーが人気である。


 
 FS/LPの館内に一歩踏み入れると、1820年代帝政ロシアの華やかなりし宮殿の香りが飛び込んでくる。エントランスホールから太い円柱の続く回廊は、天井の精緻な彫り物と相まって重厚感あふれる造りである。圧巻はホール奥に佇むステアケースだ。白亜の大理石にゴールドの紋様を付けた華麗な階段と、レリーフで飾られた壁面の空間は息をのむくらいのオーラを放ちホテルの白眉と言える。


フォーシーズンズ ライオンパレスの名称は、正面エントランスに鎮座する大理石で造られた一対の獅子に由来する

エントランスホールから太い円柱の続く回廊は、天井の精緻な彫り物と相まって重厚感あふれる造りである

ロシアンホスピタリティーを感じるレセプションデスク

1820年代帝政ロシアの華やかなりし宮殿の香りが漂う回廊

にこやかにドアマンがゲストを迎える正面エントランス

中心部に位置しトップライトから淡い陽光が入るオールデイダイニング「The Tea Lounge」

シンガポール、東京、香港の頭文字を取った「Sintoho」。すしカウンターや鉄板焼きもある

ライティングデスクから広いテラス方向の眺望

張り出した専用テラスから聖イサーク大聖堂を真正面に望む