国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Althoff Grandhotel Schloss Bensberg
 

レストランの前庭から遠く夕陽に染まるケルン大聖堂の“双頭の尖塔”を望み、
         正装してディナーに向かう高揚感は特別の物がある

 
 ケルン郊外、ベルギッシュ・グラッドバッハの高台に中世の古城を彷彿させる堂々たるホテルが建っている。ホテルの名は“アルトホフ グランドホテル シュロス ベンスベルク”「Althoff Grandhotel Schloss Bensberg」。車で近づくと、壮麗なバロック様式の城郭に続く広大な中庭の演出により、まるで魔法に魅せられたかの様な風景のシーンに到着する。300年程前に建てられたベンスベルク城の館は、どこからでも見晴らせる丘に建ち、遠くケルンの大聖堂と街並みを一望できる。


 
 今から遠く1700年代、ラインランド地方の選帝侯Jan Wellemが2番目の妻であったメディチ家のマリア・ルイーザのために建てたという邸宅がオリジナルである。1716年にヤン・ヴェレムが没すると、ルイーザは出身地のイタリアから多くの建築職人たちを連れて来て、壮大なバロック様式の城郭に仕上げていった。その後、邸宅は軍の病院や寄宿学校などを経て、1997年に地元の生命保険会社に買収され、7500万ユーロの巨費を投じて徹底的に改修が施された。2000年に系列の「Cologne Althoff Hotel Collection」により、ラグジュアリーホテル“シュロス ベンスベルク”がグランドオープンした。現在のホテルはLHWの有力加盟メンバーでもある。


 
 シュロス ベンスベルクは、84の客室と36のスイートを擁すエレガントなホテルだ。筆者にアサインされた部屋は約60㎡ある気品あるパレス・スイート「The Elector Suite」で、高い天井と優美な内装で特別な風合いが施されている。ホテル内のレストランは充実しており、メインダイニング「Vendôme」ではミシュラン3ツ星スターシェフのヨアキム・ヴィスラーが手掛ける洗練されたドイツ流フランス料理を堪能したい。城館の創始者にちなんで名付けられた「Jan Wellem」ではシャンパン・ブランチが人気であり、カジュアルレストラン「Trattoria Enoteca」では本格的イタリアンが楽しめる。スパ施設「Beauty & Spa」は1000㎡の広さがあり、ドイツでも有数の充実度を誇る。


 
広大な前庭、バロック様式の尖塔、フレスコ画で飾られた幾つもの広間、シュロス ベンスベルクはヨーロッパ屈指の美しい城館である。さらに、このバロック様式の館は世界有数の3ツ星レストラン「Vendôme」も擁している。パリの名高い広場の名前を冠したのは、ヴィスラーのフランス料理への敬意の表れだ。独立したレストラン建物の前庭から遠く夕陽に染まるケルン大聖堂の“双頭の尖塔”を望み、正装してディナーに向かう高揚感は特別の物がある。

シュロス ベンスベルクの豪壮な正門。壮麗なバロック様式の城館に続く広大な中庭の演出が見事だ

重厚、かつ威厳が漂うレセプションカウンター

婚礼のレセプション準備でテーブルセッティング中の「Jan Wellem」

朝食だけのために用意されたレストラン「Salon Lichtental」

城館の創始者にちなんで名付けられた「Jan Wellem」で朝食が用意される

落ち着いた雰囲気のベッドルーム

玄関ホワイエからベッドルームに抜けるレイアウトが面白いバスルーム

2階テラスから望む芝生の中庭。遠くにケルンの街並みの眺望も楽しめる

ドイツで最も美しいと言われる公園「Lichtentaler Allee」