国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

The Merrion Hotel, Dublin

  ザ・メリオン「The Merrion」は、アイルランドの首都ダブリンで
伝統と格式を誇る迎賓館的ホテルだ。

 
 ザ・メリオン「The Merrion」は、アイルランドの首都ダブリンで伝統と格式を誇る迎賓館的ホテルだ。ダブリン市街地の中心部に位置しているが、国立美術館と国立歴史博物館に隣接する閑静な場所にある。建物は緻密に修復された英国ジョージ王朝時代のタウンハウス4棟から成り、アイルランドの建築史を垣間見ることができる。このホテルの良さは、派手な装飾のトーンを抑えた、実に控えめな外観のホテルと言える。大きな正面玄関を持たず、ホテルの表札とLHWのプレートはあるが、凛としたドアマンが立っていなければ気付かないくらいだ。


 
 ダブリンはかつて大英帝国第2の都市と呼称されるほどに栄えたが、1949年にアイルランドが英連邦より独立し、共和制国家「Ireland」の首都となった。現在は欧州有数の金融センターを担う重要な都市の一つであり、英国のEU離脱後は、ロンドンに替わる有力な候補地にもなっている。また、アイルランドは多くの世界的に著名な作家を輩出する文芸大国でもある。バーナード・ショウ、W.B.イエーツなどのノーベル賞作家のほか、オスカー・ワイルド、J.スウィフトなど、数えきれないほどの文豪たちゆかりの地がダブリンに集中している。


 
 ザ・メリオンは19のスイートを含めて全142室を擁し、2009年に全面改修している。気品ある館内は19世紀と20世紀のアイルランド美術品を集めたプライベートコレクションを有している。今回はガーデンウィングにある「Junior Suite」を紹介したい。暖炉と余裕のバスルームが特徴のエレガントな部屋だ。ミシュラン2ツ星のメインダイニング「Restaurant Patrick Guilbaud」は、残念ながら訪問時は大規模改修中であった(現在は稼働中)。「Georgian Drawing Rooms」でのアフタヌーンティーはお勧めで、“Art Tea at The Merrion”と銘打った“アートティー”は、名画をスイーツに表現したもので人気が高い。その他、重厚な雰囲気のバー「Bar No. 23」、石造りのバー「The Cellar Bar」など多彩だ。スパ施設「Tethra Spa」はESPAやDarphinの製品を使用して地元のマダムに好評である。


 
 ザ・メリオンの館内は決して華美な装飾に走らず、洗練された上品な空間が心地よい。各部屋には、アイルランドのファブリックとアンティークを使用したデザインが施され、18世紀のタウンハウスの建築とオリジナルの気品あるインテリアが反映されている。スタッフの高いホスピタリティーと、ソフト・ハード両面に強い意識が感じられ、 ダブリンのホテルで最高の水準にあると言えるであろう。


ザ・メリオン「The Merrion」の正面エントランス。ホテルの表札とLHWのプレートはあるが、凛としたドアマンが立っていなければ気付かないくらいだ

建物は緻密に修復された英国ジョージ王朝時代のタウンハウス4棟から成り、アイルランドの建築史を垣間見ることができる

華麗な装飾が印象的なジョージアン・ドローウィングルーム「Georgian Drawing Rooms」

笑顔のスタッフが応対するレセプションデスク

「Georgian Drawing Rooms」は2部屋から成り、眩いシャンデリアが美しい夕刻の風景

重厚な雰囲気のバー「Bar No. 23」のラウンジ部分

プライベート感覚の「Bar No. 23」のカウンター

バー「Bar No. 23」のラウンジ席でスタッフからアフタヌーンティーの説明を受ける

“Art Tea at The Merrion”と銘打った“アートティー”は、3点の名画をそれぞれのスイーツに表現したもので人気が高い

ガーデンウィングの中庭。夏はここにテーブルセッティングされたテラス席が用意される

スパ施設「Tethra Spa」にあるスイミングプール。トリートメントはESPAやDarphinの製品を使用して地元のマダムに好評価だ

重厚感あふれるキングベッド。脇には暖炉が設置され落ち着いた雰囲気である

淡い色調でまとめられたシッティングエリア

アメニティの置き方にも気品が感じられる

バスルームは白亜の大理石で統一。広い面積を確保した使い勝手のよい空間である