国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

 The Dolder Grand 

 

森に囲まれた高級住宅街の閑静なロケーションに、古城を思わせるクラシカルな本館と、
スタイリッシュな新館から成るホテルは威風堂々とそびえ立っている。

 
スイス連邦屈指の名門ホテルで、チューリヒの街と湖を見下ろす高台に建つ壮麗なホテルが「The Dolder Grand」である。1899年にラグジュアリーなクアハウスリゾートとして創業してから長い伝統を誇る、チューリヒを代表するランドマークホテルだ。森に囲まれた高級住宅街の閑静なロケーションに、多くの塔を昔のままに残した古城を思わせるクラシカルな本館と、スタイリッシュなデザイン構成の新館から成るホテルは威風堂々とそびえ立っている。


 
ドルダーグランドは2004年からホテルをクローズし、4年もの歳月をかけて大規模な改修工事を施した後、08年4月にグランドオープンを迎えた。建築設計を担当したのは、プリツカ—賞を受賞した英国人のノーマン・フォスター卿が率いる「Foster+Partners」。あのシンガポール・セントーサ島の「Capella」を担当し、曲線の魔術師と言われる著名な建築家だ。新館を構成する優美な曲線がクラシカルな本館をぐるりと取り囲んでいる。また、本館メイン棟は創業当時の古典的な外観や繊細な内装のディテールなど可能な限り保存し、完全リニューアルを果たした。


ドルダーグランドはスイートを含め全176室のゲストルームを擁し、まるで物語に出て来る様な古城をイメージさせる本館建物が印象的だ。館内は伝統とモダンを調和させた気品あるインテリアで、新館とを結ぶ回廊は洗練されたアート感覚が魅力である。筆者にアサインされた部屋は、本館中央に位置したスイート「Suite Deluxe」で、約100㎡の広さを持ちバルコニーからは広大なゴルフコースと遠くチューリッヒ湖が見渡せる。メインダイニング「The Restaurant」は、名画が飾られた雰囲気の中、本格的フランス料理を堪能できるミシュラン2ツ星のレストランである。オールデイダイニング「Garden Restaurant」は、チューリヒの街を望めるテラス席がお勧めだ。また、ヒーリングスポットとして有名なセドナを拠点に活躍するシルヴィア・セピーリ女史が担当したスパ「Dolder Grand Spa」は、欧州と日本のスパ要素を取り入れた独自のスタイルで、総面積4000㎡というゴージャスな施設である。


 


驚くかもしれないが、ドルダーグランドは専用のケーブル軌道を保有し山麓とホテルのある高台を結んでいる。広大な敷地に伝統の本館とスタイリッシュな新館が融合されたホテルは実に機能的で美しい。100年以上前の建物を徹底的に修復し、近未来的な新館を何の違和感なく増設して現代のニーズに適合させる。まさに日本のホテルリニューアル事業に大きなヒントを与える贅沢な提言と言える。


ノーマン・フォスター卿が建築設計した新館の優美な曲線がクラシカルな本館をぐるりと取り囲んでいる

正面エントランス車寄せ。クラシカルな本館建物に近未来的なデザインのキャノピーが不思議とマッチする

ヒーリングスポットとして有名なセドナを拠点に活躍するシルヴィア・セピーリ女史が担当した「Dolder Grand Spa」の優雅なスイミングプール

スイミングプール全体にフォスター卿の曲線が活かされている

オープンエアのジャグジーからは遠くチューリヒ湖が望める

本館から新館を結ぶ曲線の回廊は展示品が並び、洗練されたアート感覚が魅力である

驚くかもしれないが、ドルダーグランドは専用のケーブル軌道を保有し山麓とホテルのある高台を結んでいる

大型でモダンなライティングデスクはIT関連の装備も万全だ

アーバンコンテンポラリーデザインのベッドルーム

外に張り出したバルコニーには上品な籐製のテーブルセットを用意している

広い面積を確保したスタイリッシュなバスルーム

伝統とモダンを調和させた気品あるインテリアで統一したロビーラウンジ

メインダイニング「The Restaurant」のエントランス。本格的フランス料理を堪能できるミシュラン2ツ星のレストラン

「The Restaurant」内の個室。店内は多くの貴重な名画が飾られている