国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Burj Al Arab

 

遠くアラブの地で砂漠の熱風に吹かれ、ペルシャ湾に浮かぶ蜃気楼を見たような気がした。

 
 ホテルの名称であるブルジュ・アル・アラブ「Burj Al Arab」(以下BAA)は“アラブの塔”という意味で、実にエッフェル塔を上回る321mの高さがあり、まさに洋上に浮かぶアラブ象徴の塔としての風格がある。BAAはジュメイラ・グループの旗艦ホテルとして、人工島の基礎建設に2年、ホテル建設に3年の計5年の歳月を費やして1999年12月にオープンした。アラブの伝統的な「ダウ船」の帆をイメージした外観で、海岸から280m離れた沖合に建てられた。202室ある客室はすべてデュプレックス・スイート(メゾネットスタイル)で構成されており、最低でも170m²の広さを誇る。したがって客室階数はこの高さにも関わらず27階しかないという驚くべき構造になっている。

 
 BAAには専用の連絡橋を渡って行くが、橋のたもとでセキュリティーチェックを受け、宿泊客とレストラン予約客以外は通行できない。館内に一歩踏み入れると正面に大きな石造りの階段状の噴水があり両側にエスカレーターを設置している。ふと天井を見上げれば巨大なアトリウムに目を奪われる。高さ180mを誇る世界一の吹き抜けで、純金の金箔で仕上げた太い柱が何本も立ち、純白の波打つような一つ一つのふくらみが壮麗なアクセントになっている。筆者にアサインされた部屋は「デラックス Two ベッドルーム スイート」で、335㎡の室内面積を持つ。1階にオフィス並の多目的デスクとバー・コーナー、意匠の違う二つのリビングルームがあり、2階にはキングのマスター・ベッドルームとツインのセカンド・ベッドルームを配置し、どちらも広大なバスルーム、ワードローブなど必要なものはすべて備えている。また、アメニティはエルメスで統一しており、香水などは市販と同じフルボトルで用意されている。


 
 BAAには9カ所の特色あるユニークなレストラン・バーが、舌の肥えた各国ゲストの要望に応えている。主なレストランは、海底気分が味わえるフォーマルな「Al Mahara」、海上200mの眺望を誇る「Al Muntaha」、地元アラビア料理の「Al Iwan」、そして日本料理店「Junsui」だ。ここでは、ぜひ“Culinary Flight”を試して頂きたい。“料理フライト”と訳され、各レストランを“はしご”して回るものだ。ランチでは上記の4レストランの特別料理をゆったりと堪能し、各料理に合わせたソムリエ推薦のワインも加えたコースもある。そのほかゴージャスなスパ「Assawan Spa & Health Club」、ヘリコプターやロールスでの送迎などゲストへのホスピタリティーは事欠かない。


 
 BAAは通称“7ツ星”ホテルとして広く世界に流布しているが、所轄官庁のドバイ政府観光・商務局による格付けでは「5ツ星」のカテゴリである。しかし一般の5ツ星ホテルの概念を遥かに超えた存在感は揺るぎのない事実であり、メディアとしてはもう少し星を加えたい衝動に駆られるのは理解できよう。ホテルは顧客に夢を提供する商売でもある。遠くアラブの地で砂漠の熱風に吹かれ、ペルシャ湾に浮かぶ蜃気楼を見たような気がした。


エントランスホール前面にある7色の階段状噴水

高さ180mを誇る世界一の吹き抜け。金箔で仕上げた太い柱と純白の波打つようなふくらみが壮麗なアクセントになっている

「Burj Al Arab」の正面エントランス

2階回廊は超高級ジュエラーが店を並べる

アラビアンナイトの世界を楽しめる地元アラブ料理の「Al Iwan」

海底気分が味わえる「Al Mahara」のトンネル部分

幻想的な雰囲気のファインダイニング「Al Mahara」

ロイヤルブルーの色調で統一されたセカンド・ベッドルーム

セカンド・ベッドルーム側のバスルーム。マスター側と同じレイアウトだ

デュプレックス・スイートのエレガントな室内階段