国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Brenners Park Hotel

 

“欧州の夏の首都”とも称賛される、ヨーロッパでも屈指の国際的温泉保養地だ。

 
 “バーデン”「Baden」とはドイツ語で入浴とか温泉という意味を持ち、ちょうどロンドンの西にある温泉保養地“バース”「Bath」と同意義の関係である。バーデン・バーデンはその名の通り温泉リゾートとして知られ、ローマ帝国の時代から続く歴史を持つ。温泉施設が整った18-19世紀になると、世界中から王侯貴族や文化人がこぞって夏の避暑に訪れ、保養と上流階級の社交場として発展してきた。やがて“欧州の夏の首都”とも称賛され、ヨーロッパでも屈指の国際的温泉保養地としての地位を確立した。


 
バーデン・バーデンは有名な“黒い森”シュヴァルツヴァルト「Schwalzwald」の北に位置する。温泉地と言っても日本でよく見られる歓楽街的イメージとはほど遠い文化都市で、オペラハウス、カジノ、劇場、美術館、国際会議場などを揃えた保養地である。もちろん主役は温泉であるが、すでに日本語となっている“テルメ”とか“クアハウス”の語源はドイツ語からの温泉用語だ。クアハウスの隣には“飲泉場”「Trinkhalle」があり、フリートリッヒ源泉から湧出する温泉水を飲むことができる。その温泉地を代表するランドマークがブレナーズパークホテルである。ホテルはドイツで最も美しいと言われる公園「Lichtentaler Allee」に面した理想的な環境にある。森の中をせせらぎが流れる小径に沿って大邸宅、高級別荘が点在するヨーロッパでも別格の優雅な散歩道である。


 
 ブレナーズパークホテルの歴史は1872年、この地にあった“ステファニー温泉”「Stepfanienbad」を宮廷服飾人であるアントン・ブレナー「Anton Brenner」が買い取り、ホテルとして開業したことに始まる。現在のホテルは32のスイートを含め、ちょうど100室の豪華な意匠を凝らしたゲストルームを用意している。大型のキャノピーが付いたメインエントランスを入ると、左手にレセプションデスクを見て正面に「Kaminhalle」がある。ホテルの中心的役割を担うゴージャスなラウンジであり、その先にミシュラン1ツ星レストランの「Brenners Park-Restaurant」と“温室”とか“冬の庭園”と言う意味の陽光が降り注ぐオールデイダイニング「Wintergarten」がある。さらに朝食だけのために用意された「Salon Lichtental」には専任のコックが立ち数多くのメニューを提供している。スパ「Baden-Baden Spa」 はホテル成り立ちの核心部分でもあり、ローマ帝国の時代を彷彿させる貴族趣味的なスイミングプールなど諸施設の完成度には目を見張る。また、温泉療法の本場でもありメディカルの要素を加味した「Medical Spa」は注目である。


 
 ブレナーズパークホテル&スパは世界でも有数の最高級スパホテルとして140年の歴史があり、2009年のNATO会議の際はオバマ大統領をはじめ25カ国の首脳が滞在している。現在はパリのブリストルを擁す高級ホテルグループ「Oetker Collection」の一員として、政財界、社交界から多くの顧客を持つ評価の高いホテルだ。今日もホテルは、深い森の静寂の中にゆったりと佇んでいる。

 
 

上流階級の社交場として発展した往時を偲ぶエントランスホール

ライブラリー感覚の“大人の空間”「Ciger Lounge」

“温室”とか“冬の庭園”などの意味を持ち、穏やかな陽光が降り注ぐレストラン「Wintergarten」

朝食だけのために用意されたレストラン「Salon Lichtental」

ミシュラン1ツ星レストラン「Brenners Park-Restaurant」

「Salon Lichtental」の美しいガーデン席

森の中の特別席

優美な曲線を描くメゾネットの室内階段

ドイツで最も美しいと言われる公園「Lichtentaler Allee」

木々の枝葉が風になびく麗しきガーデンレストラン

森の中、ゆったりと時が流れる「Baden-Baden Spa」内のスイミングプール