国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Four Seasons Hotel Moscow

赤の広場に隣接するマネージナヤ広場に立地し、客室やレストランからクレムリンの建物が望める
理想的な環境を誇る、モスクワを代表する迎賓館的ホテルだ。

 
 モスクワ中心部に圧倒的存在感で君臨していた伝説的ホテル「旧ホテルモスクワ」の跡地に、新たに再建されたホテル「Four Seasons Hotel Moscow」が2014年秋にオープンした(以下、FS/M)。ロシアではサンクトペテルブルクに次ぐ2番目のフォーシーズンズブランドの誕生である。赤の広場に隣接するマネージナヤ広場に立地し、客室やレストランからクレムリンの建物が望める理想的な環境を誇る、モスクワを代表する迎賓館的ホテルだ。モダンな客室は設備も申し分なく最低でも40㎡以上の広さがあり、パブリックスペースも余裕の面積を確保している。


 
 旧ホテルモスクワは、1930年代のモスクワ都市再開発に関連して計画され、二度の政府コンペを経て1935年に開業した。ロシア伝統の構成主義と古典主義が混在した建築様式に、約1000室の客室を備えた最高級ホテルであった。そのため当初計画より3倍 の規模と費用が掛かった大型工事と言われる。その後のソ連崩壊などの変遷を経て、2004年の大規模地下駐車場の建設に合わせホテルは解体された。新しいホテルの外観は旧館のクラシカルな趣を正確に再現し、住宅、オフィス、ショッピングセンター等を包含して華々しくオープンした。


  
 FS/Mは41のスイートを含む全180室の客室を擁し、1930年代の古典的な要素を取り入れつつ、館内は気品あるコンテンポラリーな雰囲気に生まれ変わった。筆者にアサインされた部屋は「Grand Premier Room」で、約70㎡の広さを持ち、クレムリンを望むバルコニー付きの部屋だ。メインダイニング「Quadrum」はイタリアン・地中海料理だがスマートなフレンチの要素を根底に置いている。ここの魅力はレストランの位置であろう。窓側の席から、赤の広場やクレムリンの建物が間近に望め、これ程のぜいたくな空間は世界でも極めてまれである。レストラン「Bystro」はブレックファスト専用として用意されメニューも豊富だ。スパ施設「Amnis Spa」は3000㎡のモスクワ最大の規模を誇り、17室のトリートメントルームを持つ。スイミングプールは、トップライトから差し込む陽光が気持ちよく、プールサイドカフェ「Amnis Café」が利用できる。


 
 モスクワのホテルは総じて古色を帯びたセピア色といった印象が強いが、近年、欧米のラグジュアリーホテル・ブランドが進出し、FS/Mはその代表格と言えよう。フォーシーズンズ流の洗練されたホスピタリティーと館内施設はゲストに至高の充実感を与える。何よりも、赤の広場やグム百貨店へも徒歩数分という好立地は貴重である。


フォーシーズンズ ホテル モスクワの威風堂々たる正面ファサード

正面玄関でにこやかにゲストを迎えるドアマンとベルキャプテン

正面エントランスから赤の広場方向を眺める。

「Grand Premier Room」のリビングからベッドルーム方向

約70㎡の広さを持ち、クレムリンを望むバルコニー付きの部屋だ

独立した大型のバスタブがユニークだ

インダイニング「Quadrum」のスマートなエントランス

イタリアン・地中海料理の店だがフレンチの要素を根底に置いている

レストラン「Bystro」はブレックファスト専用として用意されメニューも豊富だ

「Quadrum」のスタイリッシュなバーコーナー

スパ施設「Amnis Spa」のジャグジーとスイミングプール。トップライトから差し込む陽光で、タイルのブルーの色彩が美しく映える

「Amnis Spa」の広大なエントランスフロア。約3000㎡のモスクワ最大の規模を誇る

プールサイドにはしゃれたカフェ「Amnis Café」が利用できる

大理石の床に生花のアレンジメントが映えるエントランスホール

「Quadrum」の窓側席から望む、夜間の照明が美しいクレムリン