国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Fairmont Le Château Frontenac
 

セントローレンス川を見下ろす高台に建つシャトーフロントナックは、
フレンチ・ロマネスク風の堂々たる城郭建築である

 

 
カナダ東部、ケベック旧市街の高台にまるでお伽話の世界から抜け出したようなシャトーホテルが建っている。ホテルの名は「Fairmont Le Château Frontenac」。フランス総督であったフロントナック伯爵ルイ・ド・ブアド(Louis de Buade de Frontenac)の爵名に由来して命名された。ケベックのランドマークであり、大規模な城郭ホテルとしては極めて特異な存在と言える。カナダ太平洋鉄道(CPR)の社主であったウィリアム・ヴァンホーンの発案により、鉄道会社がぜいたくな旅行を奨励する施策の一環として建てられた。カナディアンロッキーにある「バンフ・スプリングスホテル」と共に、建築家ブルース・プライスによる設計で1893年に開業した。
 


 
ケベックの旧市街はメキシコ以北では現存する唯一の城郭都市となっており、1985年にユネスコの世界遺産に「ケベック旧市街の歴史地区」として登録されている。北米内で最も古い歴史を持つ都市の一つでもある。公用語がフランス語でかつ人々の生活様式や文化・芸術の面でフランス文化が極めて強いという独自性を持つ街だ。実際に旧市街を歩くと、しゃれたオープンカフェやオーベルジュが多く、まるでパリの裏通りの風情が感じられる。
 


 
シャトーフロントナックは1924年に中央部分にタワー棟を増設し、スイートを含め全611室の全容が完成した。歴史的なホテルゆえに小さめの部屋が多く、ここではタワー棟にあるゴールドフロアをお勧めしたい。高層階に位置し、ゴールドラウンジで多くのベネフィットを受けられる。筆者にアサインされた部屋は「Fairmont Gold Frontenac Suite」で、約62㎡の広さを持ち、セントローレンス川を見渡す気品ある部屋だ。メインダイニング「Champlain Restaurant」はエグゼクティブシェフのステファン・モダットが腕を振るい、カナダ全土でも屈指の評価を受けている。そのほか「Bistro Le Sam」、「1608-Wine & Cheese Bar」などが人気だ。スパ施設「Spa du Château」では豊富なスパメニューを誇り、併設した「Club Frontenac」ではスイミングプールやヘルスクラブを用意している。
 


 
シャトーフロントナックはセントローレンス川を見下ろす高台に建ち、緑青の吹いた銅葺き屋根とレンガの壁に窓の白い縁飾りが特徴のフレンチ・ロマネスク風の堂々たる城郭建築である。当初は5棟の低層棟で囲まれていたが、中央コートヤードにタワー棟が増設され、より陰影深い複雑な構成となっている。世界でも類を見ない麗しき歴史的ホテルと言えよう。
 


ケベック旧市街のセントローレンス川を見下ろす高台に、まるでお伽話の世界から抜け出したようなフレンチ・シャトースタイルのホテル
「Fairmont Le Château Frontenac」が建つ。当初は5棟の低層棟で囲まれていたが、中央にタワー棟が増設され、より陰影深い複雑な構成となっている

タワー棟中央を貫く“ピーコックアレー”。着飾った紳士淑女が孔雀の様に歩く姿に由来する回廊だ

隣接してフロマージュの試食コーナーがある「1608-Wine & Cheese Bar」のラウンドカウンター

タワー棟高層階ゴールドフロアにある「Fairmont Gold Frontenac Suite」のベッドルーム。フェアモント・ゴールドラウンジにアクセスできる

広いリビングルームからベッドルーム方向を望む。約62㎡の広さを持ち、セントローレンス川を見渡す気品ある部屋だ

ゴールドフロアのゲスト専用に用意されたフェアモント・ゴールドラウンジ

ャトータワー棟の四隅にある円柱状の出っ張り部分に当たるソファー席

シャトーの正面エントランス車寄せ。メインとなるタワー棟で、周りを5棟の低層シャトーが囲んでいる

広大な芝生ガーデンの巨木の影から16世紀のフィレンツェ・パラッツォ様式を模した館を望む

 

樹林帯のエントランスアプローチを抜けると「Wheatleigh」の麗しき正面玄関が見えてくる