国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

The Ritz-Carlton Moscow

リッツ・カールトン モスクワの大きな特徴はクレムリンや赤の広場の圧倒的景観であろう。

 
「The Ritz-Carlton Moscow」(以下、RC/M)の開業は2007年7月、ソビエト時代の絶頂期にあった「インツーリストホテル」を取り壊して全面的に建て直された。市内随一の目抜き通りのトゥベルスカヤ通りに立地し、正面ファサードは帝政ロシア時代の建築様式を模した威風堂々とした佇まいだ。他方、内装はクラシカルなデザインを基本にエレガントな雰囲気とコンテンポラリーなインテリアが施されている。クレムリンや赤の広場の近くに位置し、ソビエト時代の老舗ホテル「ホテル・ナツィオナーリ」越しに眺望するクレムリンは絶景で、まさにこのホテルの醍醐味とも言える。


 
 残念なのは、現在トゥベルスカヤ通りが全面工事中で正面玄関前は工事車両で塞がれているが、工事完成後はパリのシャンゼリゼに匹敵するモスクワ屈指のアベニューになる予定だ。RC/Mでの宿泊は、是非、クラブルームをお勧めしたい。専用のクラブラウンジは、モスクワに滞在していることを忘れるくらいの気品を保ち、NYのリッツカールトンと見間違うくらいだ。また、最上階にある「O2 Lounge」のルーフトップテラス席からの眺望はモスクワ一の絶景として有名である。ここの寿司コーナーは、数あるモスクワの日本食レストランの中でも最高級といわれる「誠司」のシェフたちが握り、高評価を得ている。


  
 RC/Mは、スイートを含む全334室を擁す11階建ての建物で、ガラス天井のドーム型キャノピーがそのまま正面エントランス車寄せを覆っている。今回はホテル最大の面積を誇る「The Ritz-Carlton Suite」を紹介したい。キッチンや書斎を含む237㎡のスイートで、リビングや寝室から赤の広場が見渡せる。レストランは充実しており、前述した「O2 Lounge」以外にも、メインダイニングの「Café Russe」、オールデイダイニングの「Novikov Restaurant & Bar」など多彩な構成である。スパ「The Ritz-Carlton Spa in Moscow 」の設備は充実しており、スイミングプールやトレーニングジムはもちろんだが、特に医学的見地からセラピーを施術する独立したコーナーは特筆に値する。


 
 RC/Mの大きな特徴はクレムリンや赤の広場の圧倒的景観であろう。「O2 Lounge」のテラスはもちろん、クラブラウンジや上層階の部屋からもその眺望を楽しめる。米ロ急接近に係る旬の話題になるが、トランプ大統領が以前この最上級スイートに宿泊した際に醜聞を残し、それがロシア当局に握られたという話が流布されている。憶測の域を出ないが、ある意味でホテルのグローバルな富裕層の顧客観を現していると言えよう。


ガラス天井のドーム型キャノピーがそのまま正面エントランス車寄せを覆っている

正面玄関でにこやかにゲストを迎えるドアマンとベルキャプテン

美しい曲線のステアケースからエントランスホールを望む

最上階にある「O2 Lounge」のルーフトップテラス席

「O2 Lounge」の寿司コーナー。日本の寿司店「誠司」のシェフたちが握り、高評価を得ている

スパ施設「The Ritz-Carlton Spa in Moscow 」にあるビューティーサロン「Vera Shubich」

スタイリッシュなスイミングプール

クラブフロアにある専用ラウンジのレセプションデスク

「Café Russe」のバーカウンター

ホテル最大の面積を誇る「The Ritz-Carlton Suite」のベッドルーム

書斎を含む237㎡のスイートで、リビングや寝室から赤の広場が見渡せる

「The Ritz-Carlton Suite」の応接室。コーナーにある見晴らしの良い部屋で、赤の広場がくっきりと確認できる

ジャグジー型のバスタブを備えた、ゆったりとしたバスルーム