国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Emirates Palace

 
 UAEの首都として威信を賭けて建設したのが
“アブダビの7ツ星ホテル” と呼ばれるエミレーツパレスだ。

 
 UAE、アラブ首長国連邦の首都はドバイではなくアブダビにある。この事がアブダビをして、先行したドバイに追い付くべく奮い立たせて来た訳である。アブダビとドバイの2都市は互いにコンペティターとして、様々な分野でライバル関係にある。最も注目されているのが、ドバイをハブ空港としたエミレーツ航空「Emirates Airline」と、アブダビを拠点としたエティハド航空「Etihad Airways」とのし烈なシェア争いだ。同様にホテル業界に於いても似た構図が浮かび上がってくる。いわゆる7ツ星ホテルとして世界に名を馳せたドバイのブルジュ・アル・アラブに対抗すべく、UAEの首都として威信を賭けて建設したのが“アブダビの7ツ星ホテル” と呼ばれるエミレーツパレスだ。

 
 エミレーツパレスは30億ドルの巨費を投じ、ケンピンスキーから運営面での協力を得て2005年にグランドオープンした。ホテルの関連敷地は100万㎡に及ぶ壮大なもので、東西両翼に延びた建物の長さは1㎞以上もある。宮殿にも匹敵するホテル館内には114個のドームがあり、建物中央のドームは高さ72.6mの巨大なものだ。さらに使用されているシャンデリアの数は1002個に達し、最大のものは重量が2.5トンになるという。また、スイートを含む394のゲストルームに60か国から1200人の従業員を雇用している。まさに巨大なパレスそのもので、事実このホテルには迎賓館としての役割も備えており、国賓や王族しか利用できない豪壮な専用門が左手に威容を誇っている。


 
 検問所に準じたゲートを通ってからホテル正面エントランスまで、車でもかなりの時間を要する。館内は各首長の肖像画が飾られた小ホールを経て広大なグランドホールに導かれる。右手にレセプションとコンシェルジュデスクが配置され、民族衣装の制服に身を包んだゲストリレーションのスタッフが客室まで案内してくれる。筆者がアサインされた部屋は「Coral Room」の名称で約55㎡の広さがあり、芝生の向こうに竣工なった「Jemeirah Etihad Towers」を望む客室だ。直ぐに担当バトラーが挨拶に来て、必要なリクエストに対応してもらえる。ホテル内には14のレストラン、バーがあり、インターナショナル料理の「Le Vendome」、イタリアンの「Mezzaluna」そして地元アラブ料理の「Mezlai」がお勧めだ。建物の中心部には広大な空間が広がり、見上げるとゴールドやクリスタルの装飾で彩られた壮麗なメインドームに圧倒される。建物両翼には個別にスイミングプールが配置され、西翼側にアラビアンムードが漂うスパ「Anantara Spa」がゲストを迎える。さらにプールの先には、1.3㎞に及ぶ美しいプライベートビーチがペルシャ湾に広がっている。


 
 アブダビ中心部はドバイと同様に超高層ビルの建築ラッシュが続き、高級ホテルチェーンも続々オ ープンしている。しかし、ドバイとの違いもアピールしており、2009年よりF1グランプリの開催や、世界最大級のモスク「Sheikh Zayed Grand Mosque」の参観で世界中から多くの観光客を集めている。今後もこの2都市の動向には目が離せないようだ。
 


広大な庭園からホテル本館エントランスに至るイースト・ウィング側アプローチ

目の前に竣工なった「Etihad Towers」の超高層ビルを眺めるイースト・ウィング側のスイミングプール

ゴールドやクリスタルの装飾で彩られた壮麗なメインドーム

客室棟の両翼に配置された眩いくらいの吹き抜けの回廊

オールデイダイニング「Le Vendome」の海が望めるテラス席

イタリアンダイニング「Mezzaluna」の気持ち良いオープンエアのテラス席

海底気分が味わえる「Al Mahara」のトンネル部分

幻想的な雰囲気のファインダイニング「Al Mahara」

玄関ホワイエから俯瞰した高い天井のベッドルーム

セカンド・ベッドルーム側のバスルーム。マスター側と同じレイアウトだ

デュプレックス・スイートのエレガントな室内階段