国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Amstel Amsterdam

 

昔日の栄光がいたる所で感じられる珠玉のホテルだ。

 
「Amstel Hotel」は1867年にオランダ初の“グランドホテル”として創業して以来、欧州の王侯貴族の定宿であった。世界中のセレブリティーを迎え、数々の受賞暦を誇るオランダ随一の権威と風格を持つホテルである。 ホテルの正面玄関を入り、吹き抜けのロビーから上階へと続く壮麗なステアケースはまさに宮殿の趣がある。これが有名な“女王の階段”で、先々代のユリアナ女王が銀婚式をこのホテルで催した際、この階段で公式記念写真を撮ったという。ホテルは2年間クローズして完全リノベーションを施した後、1992年に再オープンし、現在はIHG傘下の「InterContinental Amstel Amsterdam」の名称である。


 
アムステルダムの語源はアムステル川をき止めたダムに由来し、ホテルはそのアムステル川のゆったりした流れに威容を映している。オランダ王室や政府要人の利用も多いため、館内の装飾はノーブルな空気に満ちているが決して派手ではないインテリアだ。このホテルはSamuel Sarphatiという医師で都市計画技師がオランダの誇りとして心血を注いで建てたものである。当初はもう1棟を連結したU字型を設計したが、最終的にアムステル川に沿ってI字型の小規模な“グランドホテル”に落ち着いた。館内には彼の功績をえて銅像が鎮座している。


 
 
アムステルホテルは24のスイートと55のエクゼクティブ客室を合わせ、か79室というな客室構成である。筆者にアサインされた部屋は約55㎡の広さを持つアムステル川に面した「Executive Suite River View」で、 趣味の良いアンティーク家具が効果的に配されている。レストランは充実しており、シュラン2ツ星(現1ツ星)を持つ「La Rive」は格調高いメインダイニングで正統派のフランス料理を堪能できる。隣接する「Amstel Brasserie」は、カジュアルスタイルのブラッスリーだ。「Amstel Lounge」は華やかな雰囲気に包まれたラウンジで、地元のセレブでにぎわっている。スパ施設「The Health & Fitness Club」にはジム、トリートメント、サウナなどのほか、アムステル川に面して本格的スイミングプールも完備している。


 
アムステルホテルは決して大規模ホテルではないが、「鏡の間」など壮麗なボールルームをいくつも擁しており、かつての宮殿ホテルの面影をしのばせてくれる。また、客室へと続く気品ある廊下は幅がかなり広いことに驚く。これはイブニングドレスを着た貴婦人たちがそぞろ歩いても、ドレスの裾が壁に当たらないよう配慮されたと言われる。昔日の栄光がいたる所で感じられる珠玉のホテルと言える。


風格あるコンシェルジュデスク。背後にゴッホの「ひまわり」を飾っている

華やかな雰囲気に包まれたラウンジ「Amstel Lounge」は地元のセレブたちで終始賑わう

ミシュラン2ツ星(現1ツ星)を持つ「La Rive」は格調高いメインダイニングで、正統派のフランス料理を堪能できる

約55㎡の広さを持つ「Executive Suite River View」はアムステル川に面し、 趣味の良いアンティーク家具が効果的に配されている

約55㎡の広さを持つ「Executive Suite River View」はアムステル川に面し、 趣味の良いアンティーク家具が効果的に配されている

クラシカルなライティングデスクと書斎コーナー

ゆったりとした客室玄関ホワイエ

落ち着いたソファーセット

有名な“女王の階段”。先々代のユリアナ女王が銀婚式をこのホテルで催した際、この階段で公式記念写真を撮ったという

オランダ王室や政府要人の利用も多く、数々の受賞暦を誇るオランダ随一の権威と風格を持つホテルである