国際ホテルジャーナリスト 小原康裕が訪れる世界のリーディングホテル

Ritz-Carlton  Montreal
 

リッツカールトン モントリオールは世界に数あるリッツカールトン の中でも特別な存在である。
現在も100年以上前に開業した当時の雰囲気を忠実にとどめている

 
 リッツカールトンの第1号ホテルとなったのは1927年開業の「The Ritz-Carlton Boston」(本誌Vol.117参照)だが、実はそれより古いホテルがカナダにある。モントリオールにある「The Ritz-Carlton Montreal」(以下、RC/M)である。このホテルがオープンしたのは1912年12月31日。セザール・リッツはまだ存命中で、彼の経営哲学を受け継いだ「The Ritz-Carlton Managed Company」がニューヨークやモントリオールなど北アメリカにホテルを展開していた。第2次世界大戦を境にホテル運営の趨勢は衰え、モントリオールとボストンだけが生き残り、それぞれ独立したホテルとして営業を続けていった。


 
 やがて1980年代に新たな命が吹き込まれる。アトランタの資本家W・B・ジョンソンによって「The Ritz-Carlton Hotel Company」と改組した新会社はH・シュルツ氏を副社長として迎え、今日の隆盛の礎を築いていった。ボストンはその後、同カンパニーの一員となり第1号ホテルとして認知されていく。一方、モントリオールは当時の投資家の1人、C・ホスマーがセザール・リッツより“Ritz-Carlton”の名称使用許可を得ていたため、ロゴマークも違っている。通常は見慣れた王冠に獅子マークだが、モントリオールだけはその生い立ちが異なり、独自のライオンのロゴマークと優美なカリグラフィーの文字を使用している。


 
 RC/Mはモントリオールで最古のホテルとしても有名だ。風格を感じさせるその外観は、昔ながらの看板と共に味わいある雰囲気を醸し出している。アールヌーボーのロビーは個人の邸宅といった趣で、正面の壮麗なラウンジ「Palm Court」に目を奪われる。筆者にアサインされた部屋は「Jr. Suite King Room」で約55㎡の広さがあり、暖炉を配したコンテンポラリー感覚のスイートだ。メインダイニング「Maison Boulud」はアメリカのフランス料理界を代表する重鎮、ダニエル・ブリュ氏監修の名店で、中庭に面したエレガントなテラス席がお勧めだ。ホテル最上階ペントハウスにはスタイリッシュなプール「Rooftop Pool」を用意しており、美しい市内の景色を眺めながら楽しめる。


 
 RC/Mは世界に数あるリッツカールトン の中でも特別な存在である。現在も100年以上前に開業した当時の雰囲気を忠実にとどめている。大きくせり出した古典的なひさしとランプ、時代がかった木製のドア、高い天井に小粋なシャンデリアなど、すべてがヨーロッパの古き良き時代の香りを強く感じさせる。ここは“北米のパリ”と称えられるモントリオールの珠玉のホテルと言えよう。


独自のライオンのロゴと優美なカリグラフィーの文字を使用している

すべてがヨーロッパの古き良き時代の香りを強く感じさせる

正面の壮麗なラウンジ「Palm Court」に思わず目を奪われる

正面エントランスの回転ドア。ここにもモントリオール独自のライオンのロゴマーク

コンシェルジュと一体となった凛々しいレセプションデスク

ホテル最上階ペントハウスにはスタイリッシュなプール「Rooftop Pool」を用意している

「Maison Boulud」に付随したバーカウンター

コーナーにはファイアープレイスを配して、落ち着いた雰囲気を演出している

広い面積を確保したスタイリッシュなバスルーム