スイスには歴史的名門ホテルといわれるホテルが多数あるが、このレ・トロワ・ロワ「Les Trois Rois」はスイス屈指の歴史と格式を誇る名門ホテルである。創業は1844年であるが、前身となった宿は1681年まで遡るという伝統を誇り、スイスはもちろんヨーロッパでも最古といわれる歴史的ホテルだ。ドイツ、フランスと国境を接するバーゼルの旧市街、ライン川沿いにたたずむなホテルはある種のオーラが感じられる。フランス語で“3人の王様” レ・トロワ・ロワ「Les Trois Rois」という意味をもつ名称は、イエスの誕生を祝いにやって来た新約聖書に登場する“東方三博士”に由来し、その3人の彫像がホテル正面ファサードに掲げてある。
このホテルが公式の歴史記録に登場するのは1681年。3人の王の彫刻が作られたのは1754年で、1797年にはフランス皇帝ナポレオンも宿泊している。ホテルは全館クローズして大改築を施した後、2006年に再オープンしている。その際、それまでドイツ語の名称であったドライ・ケーニゲ「Die Drei Konige」からフランス語のレ・トロワ・ロワ「Les Trois Rois」に変更された。
レ・トロワ・ロワはスイス最古の歴史を誇り、スイートを含め全101室を擁して、ライン川沿いに威風堂々と建っている。今回はシグネチャースイート「Napoléon Suite」を紹介したい。約70㎡の広さを持つ壮麗なスイートで、テラスからと流れるライン川を望める。メインダイニング「Cheval Blanc」はミシュラン3ツ星を持つ華麗な空間で、バーゼル屈指のレストランだ。日本の「グラシアニ神戸北野」の総料理長、進氏が副料理長に抜擢され、わずか8年でミシュラン3ツ星を獲得したという輝かしい歴史を持つ。現在はエグゼクティブシェフのPeter Knogl氏が腕を振るっている。その他、ブラッセリー「Brasserie Les Trois Rois」、メインバー「Bar Les Trois Rois」も極めてクオリティが高い。また、ロビーラウンジ階下にあるシガーサロン「Salon du Cigare」もゴージャスな空間で楽しめる。
バーゼルはスイス随一の学芸、文化の中心都市として知られ、数多くの美術館や博物館が点在している。また、BIS規制で知られる国際決済銀行の所在地であり、有名なバーゼルフェアは世界最大級の時計・宝飾の見本市の開催都市でもある。スイスは昔から家族経営の宿を含めてホテル産業が発達した国だが、独・仏・スイスの国境が接する国際都市バーゼルにある、かくも歴史に彩られたレ・トロワ・ロワに滞在する意義は大きいと言える。